第11話 「ソフトレザー万歳」

ソフトレザーの靴が多くなった。
スニーカー世代の広がりや、痛い靴を敬遠する風潮からみても、この傾向はうなずける。
手袋に多用されているナッパ(シープ革)を靴素材として使うケースも目立ってきた。
一般にナッパやソフトレザーはシミになりやすい上に、アニリン染料や水性染料で色つけされているものが高級靴として出回っている。

しかし、シューケアでは特に淡い色が問題である。
ある靴メーカーはナッパ素材の手入れ法を大きなカードに記し、店頭に出していた。
ただ、どの靴がナッパなのか消費者にはわからないのが残念でした。
それでも一歩前進には違いない。このショーカードで感心したことが一つある。
シミについての記述--「一般のシミはその部分を指先で強く伸ばすようにすれば・・・・云々」とある。

早速やってみた。
ナルホド消えます。
これは革の繊維組織を押し広げることによって、黒ずんだシミが白っぽく散って見えるようになるのである。
ちょうどプラスティックの下敷きを折り曲げた時、曲がった部分が白く見えますね、アレです。
革は指先でこすったくらいでは、ダメになりません。
このアイデアを知人に話したら「あんた知らなかったのか。」
知らぬは自分ばかりなり?・・・・・・恥をかいてしまいました。

ともかく、面白い知恵ですね。
この他、記してあったことは、靴クリームやクリーナーを使用しないこと、汚れは消しゴムで雨の日は防水スプレーを、とある。
自社製品の手入れ法に細かい配慮が行き届いていて素晴らしい。

とは言うものの、これではちょっと消極的で物足りない。
靴クリームやクリーナーを敬遠したこのメーカーはそれらによる二次災害=シミを心配したためでしょうが、
皮革に栄養を与えなければ、人の皮膚と同じで老化の一途をたどり、せっかくのソフトな素材感も消滅してしまいます。
そして、これからが私の出番です。

ナッパやソフトレザー専用の商品をさがしたところ、ありました。
「ウォーリー・ソフトナッパ」がそれ。
ソフトなレザーに対してシミを作らずに栄養を与え、防水力も付けるというすぐれもの。
待たれていた新製品といっても大げさじゃないと思います。

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