ビーワックスのお話

イングリッシュギルド ビーズリッチクリーム「これだぁー!」

と叫んでしまうくらい衝撃的な出会いをしたのがビーズワックスです。

指先につまんだ箸の先1cm程の白い物質に、
心臓の高鳴りを感じながらマッチの炎を近づけた時のことでした。

今回ご紹介するのは【イングリッシュギルド ビーズリッチクリーム

そっと匂いを嗅いで見ると「イヤー何と甘く懐かしい匂いなんだろう」
と感じたのを覚えています。
そう、何故かホッとするような匂いだったのです。
郷愁を感じたのは、その昔、若かりし頃の靴クリームと同じ匂いを想い出したからなのです。
なのに、いつしか大量生産の証であるような石油臭い無機質な匂いに変わっていて、
それが当たり前になっていたのですね。

この甘い匂いはもちろん「蜜蝋(ミツロウ)」です。
英語では[ Bees Wax(ビーズワックス)]と呼ばれています。

靴クリームのお話”の中でちょっとだけ触れましたが、
靴クリームにはロウが入っています。
これはツヤを出したり、スベリを良くしたり防水したりするのに、
とても都合が良いからです。
そして、ロウは動物、植物、鉱物からそれぞれの特長をもち、
様々な種類があり、多くの靴クリームは植物、鉱物の単体またはブレンドですが、
イングリッシュギルド ビーズリッチクリームはみつロウだけ使用したものです。

みつロウはミツバチの分泌物から採ったものです。

“分泌物”とは何か?「はちみつの成分だ。」「イヤはちの巣だ。」と
海外の情報も入り乱れて、当社の社内は楽しい混乱がありましたが、
結局はみつバチの巣の成分であることがわかりました。

「はちの巣」・・・・???
田舎育ちのオジサンにとっては興味津々。

我家にだって、黄色いまだら模様の蜂が、植木の陰にいつも巣をかけているのを知っています。

あの蜂でさえロウ細工のように見えるのだから、その巣だって多分・・・・・。
ある初冬、あのねずみ色の巣をとり、マッチで火をつけて見ました。

巣は何とめらめらと紙のように燃えてしまったではありませんか。
期待は見事に裏切られましたが、頭の中にはいつも残っていました。

それから一年ほど経った、ある旅の帰りに暇に任せて機内の通信販売誌をめくっていると、
ニュージーランド産「巣入りはちみつ」というのがあり、もしかしたら・・・・。
もうたまりません。
届いた小包を開けるとタッパの中に厚さ2cmほどの平らに固まったはちみつがあり、
上下には巣であろう不織布のようなものが貼り付いていました。

ジュワット広がる甘い蜜を感じながら噛んでいると、最後にどうしても溶けないで
残ったものがありました。

炎を近づけると、今度は全く燃えずトロッと溶けて地面に落ちたのです。
みつロウが思わぬところで証明できて、冒頭の「これだぁー」につながったのです。

さて、ロウの中で最高といわれるみつロウを使用した「ビーワックス」靴クリームは
メルトニアンクリームとどこが違うのか?という質問が多いのですが、
使い勝手においては優劣がつけがたく、ツヤが幾分良いかな、
動物性ロウの方が革にはいいのかなと思う位です。

固くならないのは確かなのと、製法上油分が多いので水には強く、
コードバンにもお奨めです。
何といっても、このクリームが今売れているのは靴好き人の自己満足を
くすぐるステータスとして、“持っている”ことに意味があるのかもしれませんね。

【紗乃織靴紐(さのはたくつひも)】
イングリッシュギルド ビーズリッチクリーム

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