ミンクオイルのお話
長年愛用した自分の持ち物の年季が入り、手あかや日焼けでそれなりに黒ずんで
美しく光っている様を見るとますます愛おしく手離せなくなります。
カバン然り、ベルト然り、靴また然り。。
本革には人々を魅了する何かが潜んでいるのですね。
さて、ミンクは北米に生息しているイタチ科の動物であり、
珍重されている毛皮も現在は全て養殖したミンクだそうです。
毛皮は別にしてミンクオイルという保革油は、日本においてはかなり一般的になっています。
しかし、意外なことにヨーロッパではミンクオイルはあまり知られていません。
ヨーロッパのシューケアメーカーにもミンクオイルという商品はほとんどありません。
(M.モゥブレィ・ピュアミンクオイルは純度の高い天然ミンクを使った商品ですがイタリア製です。)
あくまでミンクはアメリカ大陸に多く生息している動物なので、
ヨーロッパではあまり馴染みがないのでしょう。
つまりミンクオイルそのものは本来アメリカの典型的な商品であるといえます。
今回はそのミンクオイルについてご説明しましょう。
ある冬の朝、地方の一女性から、「足のカカトにミンクオイルを塗っていたら見事に荒れが治った。」
という喜びの電話が入り、「皮膚にお使いになるのはどうかお止めください。」などと
一生懸命お断りしたことがあります。
また、渋谷のおしゃれな靴屋さんから「ミンクオイルをネズミに食べられた。」という連絡が入って
駆けつけたところ、なんと白いプラスティックの容器ごとかじられていて約三分の一ほど無くなっていたのです。
これらの逸話を「これは100%ミンクオイルの証です。」などセールストークに利用したこともありました。
ちなみに、ミンクオイルは毒性のないことが判っています。(注意:人体には使用できません)
このように、ミンクオイルといえば保革油だからとどんなものにも塗りたがる人や、
たっぷり塗ると革がよくなるといった、「ミンクオイル信者」がとても多いのです。
しかし、靴の革底の部分に塗るのを除いて、ビジネスシューズにミンクオイルは不要です。
保革という点だけ考えれば悪くはありませんが、ベタつき、ツヤ、補色といった
総合的なことを考慮すれば、靴クリーム(乳化性)の方がビジネスシューズやパンプスにはベターです。
また、高額なアウトドアシューズを買ったので3日に一度ミンクオイルをたっぷり使用していたら、
靴が湿っぽく表面は砂やホコリで汚れてしまったという人もいました。
では、どんな物にどのように使うかをお話しましょう。
アウトドアシューズやデッキシューズは本来、山や海で履く靴ですから、イバラの道や砂利、
岩場、湿原の中を歩くためミンクオイルをたっぷり塗ってないと靴は傷み、水が浸みてきます。
しなやかなタンニンなめし革をオイルドレザーにしてあるのはそのためです。
デッキシューズも船上を素足で履くものですから、水に強くなくてはなりません。
いずれもたっぷり塗り込んでおけば足をしっかり保護してくれます。
しかし、現在ではこれらの靴はタウンシューズとして利用されているのが大半ですから、
ミンクオイルをたっぷり塗る必要はありません。
あくまでミンクオイルは薄く塗り、空ぶきを繰り返していくうちに美しい仕上がりになります。
色があせたりしたら「あッ油切れだ!」と察してまた薄く塗る。
厚手のブラウン系革ジャンやカバンなどは厚塗りを避けるために手のひらでていねいに塗ってみて下さい。
ミンクオイルが馴染むことでなんとも奥深い味わいのある革製品に変貌します。
M.モゥブレィ・ピュアミンクオイル
http://shoefootcare.net/e106.html
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