ハイシャイン(鏡面磨き)のお話

ハイシャイン(鏡面磨き)のお話

「ハイシャインのやり方を教えて下さい。」

「鏡面磨きの際に水を使うと聞いたのですが、どうすれば上手くいきますか?」

店頭でお客様とのこんなやり取りが増えてきました。その名の通り、鏡のように人が写る位に輝くので“鏡面磨き”や“鏡面仕上げ”あるいは“ハイシャイン”などと呼ばれていますが、今回はこのテクニックについてお話ししたいと思います。
まず、ハイシャインという英単語を日本で最初に使い始めたのは実はR&Dです。日本でも鏡面磨きという作業や言葉は、昔から存在していました。1980年代前半頃までは、高級紳士靴を扱う一部の専門店などでは、店頭にあるサンプルシューズのつま先をピカピカに磨きこんでいて、スタッフの方々も「こういう風につま先を光らせておかないと、靴はまだ魂が入ってないから売れないんだよ・・。」的な感じで職人気質を感じた1ものです。
その後、バブル経済とともに靴の業界も手間をかけた売り方が減り、店頭サンプルやストックを鏡面磨きするといった慣習が少なくなりました。そんな中、1996年に当時R&Dのサプライヤー担当者が来日した際、当社のお取引先の店頭で、「シューケアトランクショー」を開催しようという話になって、週末にお客様を集めて開催しました。そこで、実際に店頭で鏡面磨きを紹介したところ、物凄い反響を呼びました。「ハイシャイン」という単語をはじめて聞いたのがその時で、その後、R&Dでハイシャインという言葉を使いながら紹介し続けた結果、その言葉が徐々に定着し、後に現在のM.モゥブレィのワックスを発売する際に、M.モゥブレィ ハイシャインポリッシュというネーミングになったという訳です。

前置きが長くなりましたが、コツさえつかめばそれほど難しく無いハイシャインですが、力の入れ具合や、水とワックスのバランスなど、冒頭の会話のように、最初は難しく感じる方も少なくありません。ここで、そのテクニックを紹介いたします。まずは、ワックスで革を光らせることができる原理です。革は表面がフラットではありません。革には無数の毛穴と繊維層がありますのでロウをそこに埋め込んで、革の表面をロウで平らにコーティングすることでフラットになり、光の乱反射が起きて強い光沢感がうまれます。
このようにハイシャインは、多量のロウを革に埋め込んで通気性をなくすので、R&Dとしては、靴のつま先やかかと部分のカウンター(芯)が入っている部分のみにお勧めしています。歩行の度に可動する甲の部分をハイシャインするとひび割れする可能性も高くなり、皮革全体が仮にハイシャインされていてもトーンが均一であまり美しく見えないことも理由の一つです。
実際の作業は、M.モゥブレィ ポリッシングコットンに油性ワックスをやや多めにとり、つま先全体に塗り込んで下地を作ります。ワックスを丁寧に塗り込んでいき、何度か繰り返した後に、ブラシの毛先を使って軽くワックスを革にすり込む感じで均します。ここで数分間放置してワックスを乾燥させ下さい。表面を少し乾燥させた後は、さらにワックスを重ね塗りしていきます。小さな弧をたくさん描くように、少しづつ優しく丁寧に、つま先全体に拡げていきます。ここまではワックスだけしか使ってないので、塗っている際に、指先にザラッとしたような引っ掛かりが出てきます。

2その感じがでたら、水を指先に1、2滴とって、表面を滑らせるような感覚でワックスを潰していきます。水がなくなったらまた数滴とって、これを根気よく繰り返します。指に巻きつけたM.モゥブレィ ポリッシングコットンの場所は変えずに、水は少な目で何度も繰り返すこともポイントです。これですぐにツヤがでることはありませんが、焦らずに丁寧にこの作業を続けて下さい。根気良く繰り返していると、ある瞬間に布が自然に滑るような柔らかいタッチが指先に伝わってきます。さらに力を入れ過ぎずに繰り返していると、ピカッと気持ちいいくらいの光沢がつま先に現れてきます。

是非、革靴のつま先をピカッときれいに光らせるハイシャインを覚えて革靴を活き活きとさせてみて下さい。周りの方々からの注目も集まり、靴の輝きだけでなく、履いているあなた自身が輝くこと請け合いです。

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