3つのアーチのお話
「ん~ッ・・・、確かにお客様は偏平足ではないのですが・・・、足裏のアーチは
土踏まずだけじゃないんですよ。」
「えッ!・・・?そうなんですか・・・??」
R&Dスタッフによるフットプリント足型測定での、お客様とのやりとりの一部
です。
確かにそのお客様の土踏まずはしっかりと持ち上がっていて、一見良い足型に
見えます。
では何が悪かったのでしょうか?
実は人の足の裏には3つのアーチがあります。
一般的に誰でも知っているのは土踏まず部分のアーチです。
ご存知の通り、この「土踏まず」が無いことを「偏平足」と呼びます。
もちろん「土踏まず」は歩行にとって大変重要で、偏平足の方の場合は
歩行中に弾むような感覚が出ないために、ベタ・ベタと歩く感じになり、
普通の人に比べ足全体が疲労しやすいという弊害が起きます。
(但し、偏平足は病気や障害というものではありません。)
しかし、誰でも知っているこのアーチ(土踏まず)以外に足の裏にはあと2つ
アーチがあるのです。
下の絵をご覧下さい。
「土踏まず」と言われる第1のアーチ(A→C)はカカトから母趾(足の親指)
の付け根までの盛り上がりを言います。その名の通り土(地面)を踏まないので
「土踏まず」と呼ばれるのでしょう。「内側の縦アーチ」とも呼ばれています。
次に第2のアーチ(C→B)は「横アーチ」と言われる親指の付け根から小趾
(足の小指)付け根までの盛り上がりを指します。「メタタザールアーチ」とも
言われます。
そして最後に第3のアーチ(A→B)であるカカトの外側から小指の付け根まで
の盛り上がりです。内側である土踏まずに対局する位置(外側)にあることから
「外側の縦アーチ」と呼ばれています。
ちなみに「横アーチ」と「外側の縦アーチ」は「土踏まず」ほどはっきりと
持ち上がっていない緩やかなアーチとなりますので、一般的には認識が薄く
余り知られていません。
冒頭の会話のお客様は、「土踏まず」はきれいにあるけれど「横アーチ」と
「外側の縦アーチ」が下がっていた為にあのような会話となった訳です。
それでは、このアーチは何のためにあるのでしょうか?
簡単に言えば人が立っているときに3つのアーチは足の裏で弓のようにピンと
張っていて、足や体全体を支えバランスを取っています。
そして、歩いたり走ったりする時に3つのアーチがバネのような役割を果たし、
弾むような感覚を与えスムーズな歩行を可能にします。
さらに理想的な足裏の体重移動をこの3つのアーチが行います。
この理想的な体重移動の際に、3点のアーチそれぞれが重要な役割を果たして
いるのです。
具体的に説明しましょう。
2.カカトから着地した後「外側の縦アーチ」を使い体重は小指の付け根
まで移動します。
3.そして、次に小指の付け根まで達した体重が「横アーチ」を伝わって
親指の付け根まで移動して
4.最後は親指を蹴り出して体が前に進みます。この蹴り出しの際に
「土踏まず」が使われます。
この一連の流れが理想的な体重移動です。
「ローリング法」とも呼ばれ正しい歩行の基本となります。
3つのアーチは歩行や走行の際にそれぞれが大変重要です。
車輪でいえば歯車の一つのようなものですので、バランスが
崩れたり一つでも欠けたりすれば、健康的な歩行はできません。
そして長い目で見れば、アーチの崩れは骨や関節などのトラブル
の原因にもなりかねないのです。
普段生活する中で、皆さんは何気なく歩いたり走ったりして
いますが、そんな時にも足の裏では自然にアーチが一生懸命
働いています。
足の裏だけ見てもこんな凄いメカニズムがあるなんて本当に驚きですね。
また、この様な話をするだけでカルチャーショックを受けて興味を持つお客様も
決して少なくありません。
先ほど「メカニズム」という言葉を使いましたが、参考までに、3つのアーチの
動きは、現在の技術ではロボットには真似することの出来ない、人間の足が
生み出す複雑かつ繊細な動きなのだそうです。
足の裏からですが、改めて神が創った「人間の2本足歩行」の偉大さを感じる話
であります。