第6話 「きゅー靴はイヤ」

ラフな服装が当たり前になっている今日、足もとが”きゅー靴”なのは嫌われる。
まして、痛い靴などは履きたくないもの。
今までは痛くてもそれは自分の足が悪いのだ、とあきらめていた人たちが、実は靴のせいであることに最近気づき始めた。
靴に関する本も「靴を間違えると病気になる」など怖いタイトルまででて「はきやすさ」は顧客作りの絶対条件になってきました。
そこで、今回はフィッティングについて話してみよう。
足で悩んでいる人には申し訳ないが、足と靴は合わなくて普通なのです。
なぜかって、人の足は左右違っているのに、靴は左右対称につくられているから。
痛い人は足と靴の差が大きすぎるからなのです。

さて、理屈をコネても始らない。
合わない靴を足に合わせるシューケア用品を紹介したかったのだ。
甲革を伸ばすストレッチ剤が脚光を浴びたのは第一次ブーツブームの頃である。
飛ぶように売れたのが「ウォーリー・レザーストレッチ」でした。
その頃は伸張器で伸ばしながらこれをスプレーしたもの。
大変喜ばれた商品だ。
ところが、売れたのは業務用で、一般消費者はその存在を知らなかったからです。
ところがある時、ある老舗の靴屋さんに陳列されていたウォーリー・ストレッチを雑誌が取り上げたとたんお客さんが殺到するとういう事件(?)があった。
なんと6ダースを1週間足らずで完売してしまったのだ。これには私もビックリしました。

世の中には、足の痛い人が何と多いのでしょう。
それなのに、ウォーリー・レザーストレッチのそんざいはほとんど知られていなっかった。
それは、靴屋さんが靴を伸ばすとき、お客の見えない奥でこっそりと使っているため。
まるで、悪いことでもしているように・・・・・・・。
これはおかしなことではありませんか。
スプレーで本当に革が伸びるのかって?
それはなぜかって?
これは困った。言いたくないが、言っちゃおう。
原理は簡単、「水」である。
革を水で濡らすと繊維組織がゆるむ。
つまりふやける。

そこでウォーリー・ストレッチの使い方をご紹介しましょう。
まず、靴を履いたまま、当たっていたい所にシューッとやって、革の繊維がゆるんだスキに、さっと歩き出す。
それだけの話なのである。なんだ、じゃあ水をふきかけても良いのでは、という賢い意見が出てくることでしょう。
実はその通り。
雨の日に靴をズブ濡れにした経験がどなたにもあるはず。
そういう時は、革が伸びて足の指が見えるほど飛び出しているでしょ。
じゃ、ウォーリー・ストレッチは一体何者でしょうか?
まさか、水を入れて1500円、それは無いでしょう。
あくまでも商品である。
使いやすさ、シミをつくらない、均一に浸透させる、早く乾くなどといった特長を閉じ込めた”魔法の水”なのであります。

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